行政書士がサポートする終活
ファイル№19 「終活における不動産整理⑦」
自分が所有する不動産を終活という目線で考えるのには、以下のような不動産の終活整理表を作成して、状況を可視化することも有効です。
1.建物は種類「居宅」・敷地は「宅地」の場合
*条件 保有財産
建物…8,000,000 宅地…22,000,000(仮に固定資産課税明細書記載の価格とする。実際相続する場合は相続時評価額に精算される)
金融資産…6,000,000(預金・現金) 被相続人年齢…75歳 配偶者…71歳
| 対象者 | 固定資産税価格 | 希望用途 | 代償分割発生 | 相続人間の事情 | 今後の修繕 | 平均寿命までの 年齢男81女87 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 自分 | 建物 8,000,000 宅地22,000,000 | 現建物に居住 居住用敷地 | 床・瓦・雨 樋・給湯器 | 6 | ||
| 配偶者 | 現建物に居住 居住用敷地 | 〇 | 要介護1 | 床・瓦・雨 樋・給湯器 | 10 | |
| 子供1 | 建物・宅地共 売買希望 | 〇 | ||||
| 子供2 | 建物・宅地共 売買希望 | 〇 | 子供の教育費が多大 |
- 固定資産税建物価格を記入。ここでは居宅8,000,000円、宅地22,000,000円とします。(実際相続する場合は相続時評価額に精算される)
- それぞれの対象者毎に利用用途を記入。ここでは子供達は既に自分達の家を保持しており、建物が必要ないという前提にします。
- 相続の基礎控除は(30,000,000円+600万×相続人数)となっていますので、上記の相続の場合は30,000,000円+600万×3となり、48,000,000万円までは相続税は控除されます。その上で上記の相続財産をあてはめると、全額が控除され、税務署への申告は不要の相続となることがわかります。けれど、相続申告が不要であっても、相続人が単独ではなく3人いるので、相続人全員の合意がなければ不動産の所有権移転登記や預貯金の引出しを行うことはできません(各金融関係者対応や訴訟を除く)。誰にどの財産をどれだけ相続させるかという遺言書がなければ、相続人同士で誰がどの財産をどのように相続するかという遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する必要があります。
また、遺産相続協議においても単なる法定相続分で相続した場合は代償分割が発生します。不動産を含む相続財産36,000,000円を法定相続分で相続した場合、配偶者は18,000,000円。各子供は9,000,000円ずつの相続になります。残された配偶者の希望が今後も住み慣れた居宅に住み続けるであれば、配偶者の相続分は18,000,000円しかないのに30,000,000円相当の土地・建物を相続することになり、子供二人は現金を分けたとしても、法定相続分では9,000,000円の相続をするはずが6,000,000円の相続分が侵害されたことになり、その侵害された分を金銭代償として土地・建物を相続した配偶者から支払ってもらうようになります。
また、建物だけを配偶者が相続して、土地を子供達二人で持分共有とし、預貯金を相続人3人で分割した場合の配偶者は建物8,000,000円+預貯金1/3の2,000,000円の合計10,000,000円の相続をしたことになります。子供達はそれぞれ宅地の1/2である11,000,000円と預貯金1/3の2,000,000円を加え13,000,000円の相続をしたことになります。この場合も法定相続分で相続してしまうと、配偶者は自分の相続分が8,000,000円不足するので各子供達が余分に相続した4,000,000円を代償支払いしてもらわねばならないことになってしまいます。
相続において法定相続という分割基準があることは重要ですが、不動産がある場合は代償分割が発生することを考えると、現実に即した遺産分割協議をせねばならないことがわかります。
けれど、遺産分割協議は相続人が行うものです。不動産を所有する自分が終活として何をするべきかを具体的に考えることも重要です。先ず相続人それぞれの希望と状況をよく聞き取り、自分が何を望んでいるのかを家族に伝え、家族として不動産の扱いを一緒に考えることもよいでしょう。もちろん、遺言書として作成しておいて家族に伏せておく選択もあります。ただ、その場合は遺言書の「付言」という欄を利用して、何故そのような遺言内容になったのかをコメントしておくと、一層相続人の共感が得られる遺言書となることでしょう。 - 終活は自分の為の「自己整理」以外に、遺していくものに対する「問題整理」の側面も持っています。相続人の健康状態や金銭事情も含めて不動産をどうするかの総合判断が必要となることでしょう。
- 不動産の中でも建物は経年劣化をします。居宅として使用するには築年数に応じた修繕費の経費は当然のものでしょう。経年とともにいつ多額の修繕費が必要となるかはわかりません。もし、相続人に居宅を遺そうと考えるならば、今後は少なくない修繕費も必要となることも合わせて考慮する必要があるでしょう。
- また、自分の今後の居住問題や、相続人に居宅を遺そうと考える時、自分や相続人の居住年数を予想するのも大事な事です。2025年の厚生省発表平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳でした。寿命は確たる計測はできませんが、不動産の相続を考える時一情報として相続人の年齢や健康具合を気にとめておくことも不動産整理の総合判断の現実的な一要素となるでしょう。
- 行政書士の相続に関する業務は「遺産分割協議書の作成」「相続相関図の作成」となっております。上記文中の相続モデルの数字は終活における不動産整理という大枠の中の、大雑把な説明のための数字として使用しております。実際相続は個人の状況ごとに複雑となりますので、相続財産に関しては税理士へのご相談をお勧めいたします。
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- 「はじめに」
- 「エンディングノートと2冊のマイファイル」
- 「ネームファイル1頁表:戸籍 裏:家族相関図」
- 閑話「終活?或る3人の話」
- 「ネームファイル1頁:戸籍 裏:家族相関図2」
- 「ネームファイル1頁:戸籍 裏:家族相関図3」
- 「ネームファイル1頁:戸籍 裏:家族相関図4」
- 「ネームファイル1頁:戸籍 裏:家族相関図5」
- 「ネームファイル1頁:戸籍 裏:家族相関図6」
- 「配偶者居住権の利用の是非①」
- 「配偶者居住権の利用の是非②」
- 「終活における不動産整理①」
- 「終活における不動産整理②」
- 閑話「終の棲家」
- 「終活における不動産整理③」
- 「終活における不動産整理④」
- 「終活における不動産整理⑤」
- 「終活における不動産整理⑥」