行政書士がサポートする終活
ファイル№11 「配偶者居住権の利用の是非②」
残された配偶者が無償で、住み慣れた住居に居住することができるようにと新設された権利が「配偶者居住権」ですが、この配偶者居住権は、実は相続に深く関わっています。
配偶者居住権は、残された家の「所有権」と「居住権」を分けて考えた時の、居住の権利です。他の相続人が家を相続し、所有権を得た家の居住権を得るということです。
配偶者居住権は財産的価値で評価され、自分の相続分の中から取得するようになります。けれど所有する場合の相続額よりは低い評価となりますので、家以外の現金、預貯金等も相続財産としてある場合などは、住みなれた家で住みながら今後の生活資金として、現金・預貯金の相続財産を多く得ることができ、より安定した老後資金を確保することができます。
配偶者居住権は登記をしなければ第3者に対抗ができません。遺言や、贈与、遺産分割協議により配偶者居住権を取得していたのに、所有者が配偶者の意向に関係なく家の売却をした場合、家の新しい買主に対して居住する権利を主張できなくなります。
けれど、登記をすると又別の問題も生じます。一度、登記をしてしまうと、配偶者の意思なくしては解除することができなくなります。年月を過ごし、配偶者自身が法律行為を理解・判断できる能力を失う可能性もあります。配偶者が施設入所となり、誰も家に住まない状況となっても、配偶者居住権の解除ができなければ所有者がその家をどうすることもできなくなることがありうるわけです。
配偶者には配偶者短期居住権という権利が保証されています。配偶者が亡くなり、家が借金の担保になっていようとも、遺産分割協議で他の相続人が所有者になったとしても、相続放棄をすることになったとしても、被相続人が亡くなってから6か月間は、家に住み続けることができます。
配偶者居住権というものがあることを知った上で、居住が保証されている6カ月の内に、どうすれば自分と家族がよりよい今後を迎えることができるのか、何度も話し合うことが配偶者が亡くなってからの終活スタートとなるのではないでしょうか。
次回は高齢者と不動産の賃貸事情についての話となります。